足の甲やひざの裏にアトピー性皮膚炎があり、砂場などの外遊びの後は手足を洗って保湿クリームを塗らないと、後でカサカサ、ピリピリ皮膚が割れていたくなるという、5歳の女の子のお父さんから相談がありました。
保育園では皮膚のメンテナンスは本人が丁寧にやっていたそうです。
周りの子はサッと手を洗っていくので、靴下を脱いだり薬を塗ったりして時間がかかる女の子は、次の予定になっている食事やお遊戯の練習などに遅れて、時にはクラスの子どもたちを待たせてしまうこともあったようです。
最近手足がカサカサの度を越してひどい状態になっているのを見かねてお父さんが
「ちゃんとクリームを塗らないからこうなっちゃうんだよ」
と声をかけたところ、女の子は泣き出しそれきり口をきいてくれなくなったそうです。
「父子二人暮らしで僕の至らないところがあるのかなあ」
とお父さんはしょげていました。
お父さんはアトピー性皮膚炎がよくなれば娘さんは機嫌を直してくれると考えているようでしたが、娘さんの気持ちになってみると
「ちゃんとケアしたいけれど丁寧にやると行動が遅くなり皆を待たせてしまう」
という二律背反があり、やむなく皆を待たせない方を選択したのかもしれません。
治療のことは別途対策を考えるとして、とりあえず担任の先生に「娘さんと仲直りしたい」と相談しようということになりました。
お父さんが担任の先生に事情を打ち明けると
「実は『〇〇ちゃんはいつも遅い』とクラスの子達からうるさく言われるので、最近は手足を洗うだけにして時間を短縮している様子だった」
と先生が教えてくれたそうです。
先生は女の子の窮状にようやく気付き、クラスの子どもたちに女の子の状況を説明し、クリームを塗れば辛い状態が落ち着くから時間がかかっても待ってほしいとお願いしました。
すると「何だ、そういうことだったら先生がもっと早く皆に説明すべきだったんだよ。待ってあげなくちゃかわいそうでしょ。」とクラスの子どもたちから叱られたそうです。
その後少し時間はかかりましたが女の子の肌は落ち着き、父子の仲直りもできた様子で、新しい治療法を探す必要はなくなりました。
皮膚に何の症状もない人から見ると、洗ったり、塗ったり、包帯を巻いたりすることが皮膚症状のある人にとってどんなに大切で必要に迫られていることなのか、知る由もないかもしれません。
伝えることの大切さを改めて感じた出来事でした。