「もう大人なんですが」
と言って不安な様子で話されたのは、シングルマザーで2人の男の子を育てたお母さんでした。
身近な親族でアレルギー体質の人が誰もいないので、本当にアトピー性皮膚炎なのかどうか半信半疑でいる様子が伝わってきます。
子どもは二人とも大学生でひとりは何も困った様子はなく、一人は高校生の頃から膝から下や首回り髪の生え際が時々かぶれていて、最近は少しひどくなってきた様子なのだそうです。
夫とは子どもが小さい時に離婚してその親族とは交流がないので、子どものような状態の人が他にいるかどうかわからないことも気にしていました。
遺伝が気になるのはどうしてでしょう。
対処方法を親族に質問したいからでしょうか。
兄弟のうちのひとりだけに症状が出ていて、今後、もう一人の子にも症状が出てしまったらどうしようと思っているからですか?
親から子、子から孫という未来のことが不安だから?
などと色々質問してみました。
おぼろげにわかったことは、症状が出ているのはお兄ちゃんの方で、大学卒業と同時に結婚したいなどと言い出し
「もしアトピー性皮膚炎が遺伝するものなら、自分が結婚して子どもができたらその子もアトピーになってしまうのか」
とお母さんに質問したことがわかりました。
お話しを聞いていて、子どもが卒業してすぐに結婚を考えていることよりも遺伝を気にしていることがお母さんにとってはショックなできごとだったのだと感じました。
ずっと先の方まで気持ちが飛んで行ってしまいましたが、少し落ち着いて手前の方から考えてみましょう。
首回り、髪の生え際という言葉が耳に残りました。これはときどき耳にする言葉です。
ある皮膚科の先生の著作の中で、
「洗い残しやすすぎ残しを見逃さないようにすると皮膚の状態は想像以上によくなる」
いくつかのできごとが紹介されていました。
私たちはお医者さんではないけれど、沢山の方々の症状のことを耳にしてきました。本に書かれていた事例はどれもよく思い当たることだったので、その後は相談の中でも注意して話題にしてきました。
それは
「髪の毛を洗ったとき下を向いて首から毛先の方にシャワーを当てて洗い流すので、気を付けて石けんを洗い流さないと、首の下の方、耳の周り、顔の輪郭に沿ってすすぎ残しができてしまい、その結果、石けん成分が皮膚を刺激し続けることになりかぶれてしまうことがある。」
「上を向いて頭からシャワーを浴びる人は洗い残しがなさそうに見えるけれど、シャンプーの成分を身体全体に浴びせることになり、頭のすすぎ残しはなくても、身体のどこかの部分にすすぎ残しができてしまってかぶれる場合がある」
といったことです。
男子の場合はすね毛がある人もいて、お風呂から上がるときすねの部分も洗い残しがないように注意しないとそこに洗い残しができてしまいかぶれることがあるのです。
お兄ちゃんの様子は、そのよくある洗い残しのケースと重なる部分が多くありませんか。
だまされたと思って、ダメ元で、洗い残しすすぎ残しのないように、シャワーの時も湯船につかるときもとにかく上がり湯はタオルを使わず、手のひらで丁寧にからだをこすって、肌に何も残っていないようにケアしてみませんかとお話ししました。
一度おこった炎症はすぐに消えてなくなってくれるわけではないけれど、皮膚に刺激物を残さないようにすることはとても大事なことです。
焦らずに1~2カ月取り組めるといいなと思いました。